「プロンプト」「コンテキスト」「ハーネス」「ループ」とラベルの付いた4つの引っ越しダンボールが左から右へ並ぶイラスト
AIの使い方は、4回引っ越してきた

AIをどう使うか、という話は、ここ数年でけっこう様変わりしてきました。

多くの人が最初に覚えたのは「うまく頼むコツ」だったんじゃないかなと思います。質問の書き方を工夫すると、返ってくる答えが目に見えて良くなる。あの感動は、わかりやすかったですよね。

でも今、第一線の景色は少し違うところにあります。「うまく頼む」より「うまい仕組みを組む」ほうへ、重心が移ってきました。

この記事では、AIの使い方がどう変わってきたかを4つの段階で整理してみます。専門用語はなるべく普段の言葉に置き換えるので、エンジニアでなくても大丈夫です。後半では、コールテンが自分の会社でいま何を試しているかも書いてみます。うまくいった話だけじゃなく、まだ途中の部分も含めて。

AIの使い方、4つの段階

プロンプト→コンテキスト→ハーネス→ループの4ステップ横長フロー図。右にいくほどAIを囲む枠が増えていく
磨く対象が、内側から外側へ広がってきた

おおまかには、こういう順番で進んできました。一つずつ見ていきます。

① プロンプトエンジニアリング(2023〜2024)── 「いい一言」を磨く

最初の段階は、AIに渡す指示文そのものを工夫する時期でした。

「○○の専門家として答えて」「箇条書きで、3つに絞って」。頼み方を整えると返事が変わる。一回の指示文=プロンプトを、どれだけ的確に書けるか。ここがすべての出発点でした。

この段階の本質は「いい一言を書く」こと。人間の腕の見せどころは、言葉選びそのものにありました。

② コンテキストエンジニアリング ── 「見せる材料」を整える

次に見えてきたのは、頼み方だけでなく「AIに何を見せておくか」で答えが変わる、ということでした。

自社の資料、過去のやり取り、前提になる背景。これらを先に渡しておくと、同じ質問でも精度がまるで違ってきます。料理でいえば、レシピ(指示)だけでなく、いい食材(情報)を揃える段階に近いです。

この段階の本質は「見せる材料を整える」こと。一言の巧さより、渡す情報の質に目が向きはじめます。

③ ハーネスエンジニアリング ── AIの「まわりの環境」を組む

そこからさらに一歩。AIそのものだけでなく、AIのまわりを整えるようになります。

ハーネスというのは、馬具や安全帯のように「動くものを支える装具」のこと。AIに対しても同じで、使える道具(スキル)、守ってほしいルール(ガードレール)、触っていい範囲(権限)、決まった作業を自動でやる仕組み。そういう環境を周りに組んでいきます。

AIを賢くするというより、AIが安全に、安定して力を出せる足場をつくる。そんな感覚です。

この段階の本質は「まわりの環境を組む」こと。関心が、AIの内側から外側へ移っていきます。

④ ループエンジニアリング(いま最前線)── 「回り続ける仕組み」を設計する

そして今、いちばん先のほうで語られているのがこれです。

ループエンジニアリングは、「発見 → 計画 → 実行 → 検証 → 修正」という一連の流れを、AIが何度も自分で回す仕組みを設計する考え方です。人間が毎回プロンプトを手渡すのではなく、仕組みの側がそれをAIに渡してくれます。

第一線では「もうエージェントにプロンプトを打つな。プロンプトを打つループのほうを設計しろ」といった言われ方もしています。少し挑発的ですが、重心の移り方をよく表しています。

イメージとしては、自動運転に近いです。走りながらカメラで前を見て、ズレたらハンドルを直して、また見て直して。この「見る → 直す」を車側がぐるぐる回し続けます。人がやるのは、行き先と「ここでは止まる」という条件を決めること。要は、この回し方そのものを設計する、ということです。

この段階の本質は「回り続ける仕組みを設計する」こと。人間の仕事は、「どこで止めるか(停止条件)」と「何を信じるか(検証の基準)」を決めることに変わっていきます。

つまり何が起きたのか ── 重心が「外側」へ移った

Before/Afterの対比イラスト。Beforeは人がAIに紙を1枚ずつ手渡し、Afterは人が仕組みの設計図を見て紙を渡すのは歯車の側
手渡す人から、仕組みを組む人へ

4段階を並べてみると、見えてくることがあります。

進化したのは「AIへの命令のうまさ」というより、人間が手をかける場所のほうです。一言の巧さから、材料、環境、仕組みへ。重心が、だんだん外に移ってきました。

以前は、人間がAIに毎回プロンプトを手渡していました。これからは、仕組みの側がAIに渡す。人間は、その仕組みをどう組むかを考える側にまわります。

「AIにお願いする人」から「AIが働く環境を整える人」へ。役割が静かに引っ越した、という言い方がいちばん近いです。

ただ、ループにも限界はある

ここまで読むと「じゃあ全部ループにすればいい」と思えるかもしれません。でも、そう単純でもないんです。

ひとつはコストです。AIが自分で何度も回るぶん、その都度トークン(処理の燃料のようなもの)を使います。回せば回すほど費用はかさみます。

もうひとつは、「中身を理解しないまま動いてしまう」リスク。仕組みが滑らかに回ると、人間が途中を見なくなります。動いているから大丈夫だろう、と。でも、その動いているが正しいとは限りません。

だからこそ、ループには停止条件と、人間の判断を残すことが肝になります。全部を任せきるのではなく、要所で人が顔を出せる設計にしておく。最前線だからといって、人の出番がなくなるわけじゃありません。むしろ「どこに人を残すか」を決めることが、人間のいちばん大事な仕事になってきています。

コールテンは、いまどのへんにいるか(実験ノート)

AI参謀Tikiを中心に32名のAI社員が部署ごとに並ぶ組織図風イラスト。中央に作る人とチェックする人の双方向矢印、下にMEMORYから成果物への階層バー
全部を渡さず、案内板から降りていく(左:テト=人間/右:Tiki=AI参謀)

ここからは自分たちの話です。すごいでしょ、という自慢ではなくて、試行錯誤の途中報告として読んでもらえたらうれしいです。

コールテンでは社内に、AIの参謀役として「Tiki(ティキ)」という存在を置いています。その下に、10部門・32名分のAI社員チームを組んでいます。経営企画から営業、開発、経理まで、役割を分けたAIたちです。

このチームで一番大事にしているルールが、「作る人」と「チェックする人」を必ず分けること。同じAIに、自分の仕事を自分で採点させません。人間の組織でも、書いた本人だけのチェックでは見落としが出ますよね。あれと同じ考え方を、AIチームにも持ち込んでいます。

それぞれのAI社員は、いきなり全部を渡されるのではなく、情報を階層で辿る設計にしています。最初に見るのは MEMORY という「案内板」。そこから、ルール → 自分の部署 → 使えるスキルやナレッジ → 会社全体の知識 → 実際の成果物、と必要なぶんだけ降りていきます。全部を一箇所に書き込むと重くて散らかるので、「どこを見ればいいか」を先に示しておく。そういう工夫です。

そして今ちょうど取り組んでいるのが、ハーネス(環境を組む段階)から、ループ(回る仕組みを設計する段階)への移行。たとえばこんなことを試しています。

  • AI社員が、過去の失敗や成功を自分の記憶に少しずつ溜めて、次に活かす仕組みを育てています。ただ、まだ全員分が育ちきっているわけではありません。これから複利で積み上がっていくはずで、今はその種まきの最中です。
  • ブログを書くときも、書くAIとチェックするAIを分けて、品質の基準を満たすまで書き直すループを回しています。実はこの記事自体も、その流れの中で生まれました。
  • AIたちが常に読み込んでいる設定ファイルを、「全部書いておく場所」から「どこを見ればいいかの案内板」へと、少しずつ削って整え直しています。重くしすぎないための、地味だけど大事なメンテナンスです。

派手な成果がもう出ている、という段階ではありません。でも、進んでいる方向は確かだと感じています。

この姿勢は、コールテンがずっと大事にしてきた考え方とも地続きです。完璧な正解を一発で当てにいくより、小さく試して、その人らしさ(その組織らしさ)を引き出していく。AIの使い方も、たぶん同じやり方で育っていくんだと思います。

まとめ ── 最後に残るのは、人の判断

AIの使い方は、プロンプト → コンテキスト → ハーネス → ループ、と4回引っ越してきました。磨く対象は、いい一言から、いい仕組みへと外側に広がってきました。

でも面白いのは、仕組みが賢くなるほど、人間の判断のほうがかえって大事になってくることです。どこで止めるか、何を信じるか。AIは相棒として隣で回り続ける。その回し方を決めるのは、やっぱり人のほうだから。

コールテンも、まだその途中にいます。完成形を見せられる段階じゃないけれど、同じように「AIをどう育てるか」を考えている人とは、けっこう近い景色を見られる気がしています。

もし、自分の組織でAIをどう組み込むか整理してみたい、というのがあれば。一緒に現在地を確かめるところから、ゆるく始められたらうれしいです。

AIを自分の組織にどう組み込むか、一緒に整理してみませんか

「何から手をつけるか」を見極めるところから、ゆるくお手伝いします。コールテンの試行錯誤は、これからもこのブログで等身大に書いていきます。

※本記事は2026年6月時点の内容です。情報は変更される可能性があるため、最新は各公式サイトをご確認ください。